今回はお客様のリクエストに合わせて、いつものコースを少しアレンジしてご案内しました。紅葉に包まれる静かな道をゆっくりと歩いていくと、木々のトンネルをくぐるたびに光の入り方や風の温度が少しずつ変わっていき、そのささやかな移り変わりが心を落ち着かせてくれます。

この散策は、街中のゆるいお散歩というより、自然のペースに合わせてしっかり歩くタイプです。それでも急な上りが続くわけではなく、ガイドが歩幅やスピードを調整しながら進むため、初めての方でも安心して歩いていただけます。「思っていたより歩けました」というお声をいただくことも多く、このコースの魅力のひとつになっています。

紅葉の道を抜けて視界が開けると、仙石原のススキ草原が一気に広がります。写真でよく見かける景色ではありますが、実際に風で揺れるススキの音の中を歩くと、その印象はまったく違います。大きな空と、光を受けてきらめく草原に包まれる時間は、秋の仙石原ならではの心地よさがあります。

道中ではクロモジの枝に触れていただき、ほのかな香りも楽しんでいただきました。「京都のお茶体験を思い出します」とおっしゃるお客様もいて、自然の香りが思い出とつながる瞬間をご一緒できたことが嬉しく感じられました。

季節柄、空気には少し冷たさがあるものの、仙石原の景色はどこか柔らかく、歩いているだけで穏やかな気持ちになります。木漏れ日や揺れるススキ、深まりつつある紅葉が、ゆっくりと秋の景色へと導いてくれます。

写真を撮りながらでも、ただ歩くだけでも、どちらでも楽しめるのが仙石原の良いところです。風や光、そして香りに寄り添われながら、秋の箱根をしっかり味わっていただける散策ツアーとなりました。